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東京高等裁判所 平成9年(ネ)4974号 判決

神奈川県横浜市港北区日吉本町二丁目四四番一八号

控訴人

株式会社自然化粧医学会

右代表者代表取締役

井上浩郷

東京都墨田区墨田五丁目一七番四号

被控訴人

鐘紡株式会社

右代表者代表取締役

石原聰一

右訴訟代理人弁護士

鈴木秀彦

右補佐人弁理士

鈴木秀雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴人が求める裁判

「原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。右敗訴部分に係る被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決

第二  当事者の主張

原判決摘示(四頁九行ないし二八頁二行)のとおりであるから、これを引用する。

第三  当裁判所の判断

当裁判所も、

イ  「ナルド」あるいは「NARD」の語は、日本国内においてはなじみが薄く、化粧品の取引者・需要者に特定の観念を想起させない、

ロ  したがって、控訴人標章(原判決にいう「被告標章」)からはいずれも「ビオ」の称呼を生ずる、

ハ  一方、「BIO」は、わが国化粧品業界の大手である被控訴人の主力商品シリーズを表す標章として化粧品の取引者・需要者の間で周知であって、「ビオ」の称呼を生じ、強い自他商品識別力を持つ、

ニ  これに伴って、「ビオ」の標章も、被控訴人販売に係る化粧品を指すものとして強い自他商品識別力を持つ、

ホ  その結果、控訴人標章は少なくとも称呼において本件商標と同一であるから、控訴人標章はいずれも本件商標に類似する、

ヘ  被控訴人の請求は原判決主文第一ないし第四項掲記載の限度で認容すべきである

と判断する。その理由は、原判決理由説示(二八頁七行ないし七〇頁五行)のとおりであるから、これを引用する。控訴人は、当審において、原判決別紙「被告商標目録」(三)の標章について商標権の設定登録を受けた旨主張するが、右主張事実は、右認定判断を左右するものではない。

なお、控訴人は、当審において、「BIO」は既に日本国民の間に定着した一般用語である旨主張する。確かに、「バイオ」の語が、バイオテクノロジーあるいはバイオリズム等の略称として広く使用されていることは当裁判所にも顕著な事実であるが、「BIO」あるいは「ビオ」の標章が前記のように被控訴人の主力商品シリーズを表すものとして化粧品の取引者・需要者の間で周知であり、強い自他商品識別力を持っている以上、控訴人標章のうち「BIO」の部分は、化粧品の取引者・需要者の間では「ビオ」の称呼を生じ、「バイオ」の称呼を生ずることはないと認めるのが相当である。そして、「バイオ」の語と化粧品の間に特別の結付きが認められないことは原判決説示のとおりであるから、控訴人の右主張は、控訴人標章三ないし五から「ビオ」の称呼を生じないことの論拠にはならないというべきである。

よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法六七条、六一条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成一〇年六月一六日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 春日民雄 裁判官 宍戸充)

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